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平成23年度第1回 旬の選りすぐり産品特集~伊勢原のなし~

特集 旬の選りすぐり

平成23年度第1回 旬の選りすぐり産品特集は、「伊勢原のなし」です。

 

今回は、神奈川県伊勢原市で梨を生産している生産者さんにお話を伺いました。
(取材協力:JAいせはら果樹部会 和田新一氏(梨部長)、和田裕一氏(委員長)、JAいせはら、野菜ソムリエコミュニティかながわ)

 

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「伊勢原のなし」を、かなさんの畑で購入できます!

本特集の公開にあわせて、かなさんの畑では「伊勢原のなし」を50箱限定で販売します。

今回の商品は、JAいせはらの生産者さんが丁寧に育てられたものです。ぜひお買い求めください。

販売は終了しました。

ご注文されたお客様へ(支払方法などについて)

 

今回のかなさん

今回の生産者は、JAいせはら(果樹部会)に所属されています。

和田新一さん

和田 新一さん

(わだ しんいち)

成田孝雄さん

成田 孝雄さん

(なりた たかお)

石井和夫さん

石井 和夫さん

(いしい かずお)

多田光正さん

多田 光正さん

(ただ みつまさ)

今回は、私たち「野菜ソムリエコミュニティかながわ」が「伊勢原のなし」を取材しました!

  • 私たちは、日本野菜ソムリエ協会の認定する「野菜ソムリエ」として、神奈川県の野菜や果物を広めていく活動をしております。
  • 神奈川県は、山あり、川あり、海ありと豊かな自然にも恵まれ、おいしい野菜や果物を生産しています!
  • また、都市部に近いということもあります。ぜひみなさんも、神奈川の野菜や果物を愉しみましょう!

野菜ソムリエコミュニティかながわについては、下記ホームページもご覧ください。
http://vfckanagawa.cocolog-nifty.com/

 

野菜ソムリエ 石川アミさん
野菜ソムリエ 石川アミさん

「伊勢原のなし」は今…

伊勢原のなし

「伊勢原のなし」の魅力を伝えたくて、これを書いている今、大型で強い台風6号の影響による雨が、我家の屋根を強く叩いています。例年より早い梅雨明けの後、晴天が続き、おいしくなりそう!と、収穫を心待ちにする段階に入っていた今、逃げることの出来ない梨たちは、この風雨に耐えてくれるでしょうか。神奈川県農業技術センターに設置されたライブカメラで、黒く立ちこめた雲に覆われる大山の様子を見ながら、取材時に伺った台風対策の話が、現実に施されているのかと思うと心が落ち着きません。

 

この気持ちは、もちろん、「伊勢原のなし」の完熟のなめらかなおいしさを味わう幸せな時間を過ごしたいからに他なりませんが、ただ梨が食べられないというだけでなく、私たちにその幸せをもたらすために、和田さんたちが費やしてきた「丹精」が損なわれるかと思うと気が気ではないのです。枝に副え木をしたり、縦横に張られた網に固定するなどの台風対策の作業の過酷さも、昨日までの暑さを思えば想像に難くありません。

でも今は、それらが功を奏することと、この台風を乗り越えて味わう梨が、よりおいしくなることを祈りながら、「伊勢原のなし」を紹介しましょう。

生産者さんの畑におじゃましました

大山を臨む伊勢原の梨畑
大山を臨む伊勢原の梨畑

取材に伺ったのは6月の終わり、「ここからの眺めが一番いい」と言う和田さんの、地元への想いのこもった言葉通り、大山を背景にした梨畑は、落語にも語られる大山参りの様子や参拝客で賑わうこの町の発展の歴史まで垣間見せてくれるよう。

取材は、こちらも収穫を待つばかりのぶどう畑に寄り道しながらと、すっかり旅人の気分。こちらは暑さも紫外線も忘れワクワクしていますが、生産者さんは完全防備。その姿からも、様々な手入れに勤しむ様子が伝わります。

手入れ中のぶどう畑
手入れ中のぶどう畑

さて、お目当ての梨はというと、摘果を重ねて選び抜き仕上げの段階。それでもまだコブシよりも小さくてかたい青い実で、あと一月半ほどで私たちが食べるあの大きな梨に育つと聞いて、ここまで来るのがいかに長い道のりかというのを思い知らされます。拝見したのは、幸水という品種。野菜ソムリエでなくとも、誰もが一度はこの名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか?そして、なんていい名前だと思うのは、私だけではないでしょう。まずはその由来を紐解いたら、かながわとの深い縁が見えて来ました。

幸水のお母さんは、神奈川生まれ

伊勢原のなし

梨の代名詞とも言うべき代表的な品種「幸水」は、梨の中では早生と呼ばれ、そのジューシーさと冷やしても充分に堪能できる濃厚な甘みで、梨の季節到来を告げてくれます。

交配の始まりは、昭和16年頃。戦時中でありながら、梨の交配が盛んだった当時の農林省園芸試験場で作り出された2000近い系統の一つでした。幸水の母は菊水、父は早生幸蔵という品種。それぞれから一字をとって命名された幸水のおいしさのルーツを更にさかのぼると、母 菊水の育成者で、当時神奈川農事試験場長であった菊池秋雄という人の、こんな逸話に辿り着きます。

 

大正3年、大学を出たばかりの菊池氏は品評会で二十世紀と出会い、その「おいしさ」に強く心を揺り動かされ、勤務先となった二宮町の神奈川県農事試験場(現神奈川農業技術センター(平塚市))で、梨の品種改良に精力的に取組みます。鳥取に移住してからも二宮に嘱託として通いつめてまで育種を続けました。当時の交通事情を考えると、その意欲のほどが伺えます。しかも二宮滞在中に関東大震災に遭い、倒壊した庁舎の中で九死に一生を得たにも関わらず、その後1ヶ月も温室に泊まり込んで調査を続けたといいますから、その情熱たるや計り知れません。彼が育成した品種は、命名されたものだけでも30を超えているそうです。その一つである菊水は、もう一つの梨の代表品種 豊水も含め、新しく生まれた品種で「水」の名がついているものの多くがこの系統であるほど、現在の梨にも大きな影響を及ぼしています。その功績は、菊水の原木が天然記念物として、二宮の果樹公園で大切に保存されていることからもわかります。

梨畑

そんな名品種菊水の子として生まれた幸水ですが、育成してみると、生まれたばかりの時は花芽がつきにくく収量が上がらない、実は小さく変形しやすいなど、欠点だらけ。主要品種の受粉用としての価値程度しか見込まれない劣等生だったそうです。その幸水が今や、日本梨の約40%の生産量を占めるとも言われるほどになったのは、多くの技術者や栽培農家の意欲や情熱によって栽培技術が向上したからこそなのだそう。交配から70年、様々な人々によって積み上げられた日々が今の幸水の礎となっていると思うと、味わいもより深く感じられそうです。

現在の「伊勢原のなし」づくり

和田さんに話を聞く石川さん

さて、連綿と紡がれるおいしい梨づくりの日々を、今伊勢原で栽培農家として継承している和田さんたちに話を戻しましょう。

伊勢原での梨の栽培の歴史は昭和23年頃から。代々続く生産者さんもいれば、代替わりの際に梨栽培をはじめた方もあり、約100名の会員で構成される伊勢原落葉果樹生産組合という組織で、伊勢原のなしの品質を保つための様々な取り組みを行っています。畑での栽培講習や見合いなどで、常に実践的な栽培技術の向上を図っているそうですし、単なる継承だけでよりよい梨はつくれないと、革新めまぐるしい現代の栽培技術についての研修を行っています。とは言え、栽培環境の変化を予測することは簡単でない面も多く、積み重ねられた経験や勘によって助けられる局面もあるとか。組合での活動だけでなく、生産者さんそれぞれが日々注意深く観察し、考えながらおいしい梨を育てているのです。

取材中の風景

取材の際、いみじくも今回の台風のような天候の影響についての話になったのは、そんな栽培の難しさについて質問をしていた時でした。

「例えば少しくらい落とされてもいいように、余分にならせることはできないの?」と聞くと「良い梨をつくろうと思ったら、損得だけでは難しい。その樹その樹の状態に適した数を決め、作り方を考えていかないと」と和田さん。私の質問に苦笑するその複雑な表情から、台風の進路に限らず、気温、降雨量、日照時間、動物や虫、病気の影響など、科学的にわかっていることとまだまだ予想もつかないことの狭間で、日々梨と向き合っている生産者さんが、短い時間で全て語り尽くせるはずもないことを痛感しました。

 

ところで、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故の影響で、放射性物質による農作物の汚染が心配される中、伊勢原のなしは、放射能濃度の検査を受けることが決まりました。

 

これまでも、組合の役員経験者で構成される検査員を置き、畑や収穫された梨、販売店、販売方法などについて、自主的な厳しい基準のもとに検査を行い、高品質を維持してきたのですが、更に私たちに安心の拠り所として検査が実施されるのはうれしいですね。

※神奈川県では、平成23年7月19日に伊勢原市の梨の放射能濃度検査を実施したところ、放射性ヨウ素、放射性セシウムともに不検出でした。
 詳しくは神奈川県のホームページ「県内で生産された食品の放射能濃度について」をごらんください。

伊勢原のなし

そして、何をさておき一番おススメしたいのは、そのおいしさ。遠くの銘産より伊勢原の完熟 幸水。一つの品種の旬は、実はとても短くて、ほんの10日~2週間位。一方で私たちが感覚的に捉えている梨の季節は2~3ヶ月くらいでしょうか。これは、実はいろいろな品種や産地のリレーで成り立っている期間なのです。「旬」という字には、「10日ほどの期間」という意味がありますが、そう考えると、幸水の旬はほんの一瞬。この機会を逃したら、また来年~の1年に1度の、貴重なお楽しみなのです。

 

一昨年ご紹介した「浜なし」と甲乙つけがたい…いえいえ無理、つけられない、完熟のおいしさを味わえるのは、地産地消ならでは。木の上で充分おいしく食べ頃になった梨は、その日に穫れる分だけ販売。売り切れごめんの直売だからこその、おいしいタイミング…一度味わったら、それを知らなかった時には戻れません。

だから、神様お願い!マーゴン(台風6号)をどうにかして下さい!今年のお楽しみを奪わないで!お祈りっ。

※台風6号による大きな影響はありませんでした。現在出荷に向けて、ふっくら大きく成長しています。

<この特集の執筆は、野菜ソムリエの石川アミさんにお願いしました。>

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