かなさんの仲間通信~地産地消の輪
第16回 平塚農園 平塚 昌廣さん
私は小田原市で、主に米とみかんを生産している農家です。
元々実家は農家でしたが、私は農業の勉強もしてこなかったし、3年程サラリーマンをやってからの就農だったので右も左も分からない状態でした。1年間は祖父の言うとおりに仕事したのですが、最後に年間の収支を計算したら驚きました。何かを変えなければならないとの危機感が、私の農業のスタートでした。
何をして良いのか分からなかったので、色々な農家さんの所に行って話を聞いて回りました。そこでは技術的な事もそうですが、何より精神的な部分で勉強になりました。農家さんの中には毎晩夜1時過ぎまで袋詰めの作業をしている方や、朝3時に起きて仕事をして夜はヘッドランプをつけて農薬を散布している人もいました。自分よりも1回りも2回りも年上の方がやっている事実を目の当たりにして、自分自身の甘えや弱さを痛感しましたし、非常に刺激にもなりました。効率良く仕事をすることも大事ですが、結局は数をやらなければ儲けが出ないのも事実です。特に私は経験では他の農家の足元にも及びません。そんな私が良し悪しの判断なんて出来る訳がないし、なんでもやってみようと思いました。
まず取り組んだのはメインとなる米作りです。
レンゲ
クリムゾンクローバー
幸いウチの地域は富水(とみず)と言われるくらい水が豊富で、富士山や丹沢山系から流れる川は水質も良くお米を作るのには最適な場所です。差別化を図るため、化学肥料の代わりにレンゲやクリムソンクローバーを緑肥として使用し、化学肥料(窒素分)と農薬を5割減で作った特別栽培のお米を作りました。また一昨年から独自に放射能検査を行って、セシウムはすべて不検出の安心安全のお米として売らせて頂いています。
売り先を増やすために年に何回か横浜や東京に販売に行き、知って頂く努力もしました。何度か行くうちにお客様に『美味しかったよ』と言って頂き、初めて自分が評価された気がして農業をやって良かったなと思うことができました。また、直接お客様に説明する事がとても大切で難しい事だなと思いました。
こだわりの作物を作っていても伝える事が出来なければ普通の作物と同じだし、その作物の特徴を分かりやすく伝えて買ってみたいと思わせなければならないし。まだまだ勉強する事はたくさんあります。作る事も売る事も出来なければ農家は食べて行く事が出来ません。大変ですけどやりがいのある仕事だし、自分次第だと思います。特に神奈川の農家は消費地が近く、やり方によっては可能性がいくらでもあるし、やっている人はやっています。
農家個人が考え、強くなる事で地域全体が強くなり、地域農業を守って行く事に繋がると思っています。一番分かりやすいのが収入ですが、年間100万で満足する人もいれば1000万でもまだまだと言う人もいます。何を目指すかはその人の自由ですが農業に関わる事が出来た以上は上を目指していきます。その結果、地域農業の貢献に少しでも繋がればと思います。まだまだ勉強不足ですし、経験も足りませんが人に誇れる仕事(農業)をしていきたいです。
執筆者プロフィール
平塚 昌廣(ヒラツカ マサヒロ)
1983年11月28日生まれ
平塚農園
名前は平塚ですが小田原に住んでいます。
好き勝手にやらせてくれている祖父には感謝です。
好きな食べ物:シーザーサラダ。
栽培作物:米、みかん、野菜各種(予定)