かなさんの仲間通信~地産地消の輪
第2回 高梨農場 高梨 雅人さん
私は神奈川県三浦市の農家に生まれました。県下でも農業者の多い露地野菜産地だったため、一定の経営状態の農家子弟ならば就農するのはあたりまえの地区でした。そのため、私も特に逡巡することもなく1985年に就農しました。
就農当初は三浦農業の主流でもあるダイコン—キャベツ—スイカの共販農家(※)としてスタートしました。この頃は1979年10月の台風で壊滅的な被害を受けた三浦ダイコンが、青首ダイコンに切り替わっていた時期でした。そして、三浦ダイコンの栽培は、限定販売という形になり共販出荷するにはいろいろと制限がありました。ダイコンは料理に応じて品種を使い分けるものだろうと思っていた私は、これをきっかけに直売の比重を増やして、1992年からは直売専業の農家になりました。
私が直売専業になった頃、直売農家は少数派でしたが、最近は大規模で少品目を大量生産する農家から、多品目を栽培する直売農家、イチゴ狩りのような体験型農家など多岐にわたるようになり、三浦半島農業もさまざまな経営形態の農家が増えてきました。年間売り上げが10億円を超える大型農産物直売所も珍しくなくなっています。全国的にはグリーンツーリズムやブルーツーリズムなどの動きも出始めてきて、生産物を売るだけでなく、農林水産業の現場に消費者を呼び込もうという流れになってきました。
このような動きの中で5年近く前から、神奈川県横須賀三浦地域県政総合センターの事業として三浦半島の農業漁業の現状の調査や、問題点の分析が始まりました。その後、現状を何とかしたいという農漁業者の有志が集まり、勉強会や先進地の視察などを積み重ねてきました。そして、昨年1月に「三浦半島農漁業体験直売ネットワーク」(以下ネットワークと略します)と当事者でも正しくいえないくらいの長ったらしい名前の組織が立ち上がりました。(詳しくは「かながわ農の逸品」http://kanagawa-ippin.jp/(外部サイト)サイト内の三浦半島の情報をご覧ください。)
設立当初は、まず三浦半島の農漁業者、飲食業などの会員を増やしながら、どこで誰がどんな事業をおこなっているのか、という名簿の作成から手を付けました。
三方を海に囲まれた三浦半島は、海から畑までさまざまな食材があり、いろいろな体験施設もありという、コンテンツ満載の地区です。三浦半島内の同業他社の様子を知っていると、自分のお客様からの質問に答えたり、次の行き先の案内もできるようになりますので、まず自分たちの地域のことを知ることから始めました。
その後、各事業者を巡る視察を実施したり、かながわ農の逸品サイトへの情報掲載の講習会を受講。会員各直売施設や体験施設のコンサルティングや、生産物の販売に加え、体験施設などの「おすすめ散策コース」づくりなどにも取り組んでいます。
今年度は一般の方を対象におすすめ散策コースの試験ツアー実施などを予定しています。この原稿を書いている段階では、ネットワーク会員対象におそろいののぼりを作成して配布をおこないました(写真)。そののぼりを目当てに三浦半島を巡ってみるのもいいかもしれません。
ネットワーク会員はそれぞれいろいろな問題を抱えていて、現状に満足はしていません。勉強会などを通して、一般のお客様に満足していただけるよう努力を続けていきますので、今後もよろしくお願いいたします。
(※ 共販とは、販売を農協に委託する方法)
執筆者プロフィール
高梨 雅人(タカナシ マサト)
1962年三浦市生まれ。
露地野菜を中心に年間150種類の野菜を栽培する直売農家。