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地産地消のススメ

かなさんの仲間通信~地産地消の輪

第8回 吉田てづくり農園 吉田 雅信さん

野菜の生産と販売を通して目指していること

私は1999年に会社員を経て野菜の生産者となりました。現在は横浜市泉区内の9000m²の畑で農薬、化学肥料不使用の不耕起栽培で年間約60種の野菜を生産しています。販売は自身の住まいでもある東戸塚駅近隣を配達圏として、週3回の会員制個人宅配販売と、飲食店、老人ホーム、小売店への卸販売を行っています。販売地域を限定するデメリットもありますが、そうすることで朝収穫したものを、その日の午後に一軒一軒お届けすることができ、生産者と消費者が直接対話できる小さな地産地消が成り立っています。
様々な手段を用いて、いつでも何でも欲しい野菜が安価で買えることが普通となっている現代社会にあって、農薬も化学肥料も使用せず、その土地の気候に準じた露地栽培だけで食べ物を作るということは異質なことです。それでもこれまで経営してこれたのは、買い支えてくれる多くの消費者や経営者の皆さんのお陰と感謝しています。

私はこの仕事を通して2つの目標を持っています。


つやつやと美しい吉田さんの有機野菜

1つめは“有機農業の普及”。誰もが食べたい有機農産物ですが、なかなか有機農業は普及しません。有機農業は自然の摂理に従う食糧生産方法です。有機農産物を求めるのと同時に、自然を尊重した生き方をする消費者が増えないと有機農業は成り立ちません。例えば“トマトが採れ始めたら連絡が欲しい”というご要望には、当農園の主旨をご説明してその季節のものをご利用くださる様にお願いしています。農薬も化学肥料も存在しない数十年前までは食べ物全てが有機農産物でした。その時代、なぜ人々は足ることを知り、食べ物を大切にしたのか?なぜ豊作を祈願し神事を催したのか?消費者がそういう人々の思いを馳せれば日本の農業はゆっくり変わり始めると思います。

2つめは“国産国消”。こういう言葉があるのか分かりませんが、日本人が食べ物に関心を持ち、日本の国土、気候に育まれた食料を感謝して食べる、こういう社会に戻って欲しいと思います。昨年、農水省が農業センサス(5年ごとに調査する農業人口速報値)を発表しました。これによると前回調査した2005年より農業人口は75万人減少。過去25年で260万人に半減。平均年齢は66歳で全体の60%を超える160万人が65歳以上。今後毎年10万人以上が減少する見込み。これが私達に突きつけられている現実です。このままだと日本農業は10年もたないとの分析もあります。日本の食料自給率が低いのは私達の食生活、消費行動が原因であることをまず自覚しなくてはなりません。

さて、国産国消から、神奈川県民である一生産者として地産地消、神奈川県の農業について考えてみたいと思います。その土地で採れたものをその土地に住む人が消費する、これはあらゆる点で理想的なことです。
一方で神奈川県の農業の姿をご存知でしょうか。過去20年で農業人口は約2.8万人と何と60%以上減少、耕地面積は約25%の減少です(参照:県HP『統計データで見る神奈川県農業の概要(外部サイト)』)。人口の密集する神奈川県は農業には不向きで、商工業を振興するべきという意見もあり、それもまた貴重な意見だと思います。しかし、農地は食糧生産の場であるだけではなく、大切な自然環境の一部で様々な生き物の住処でもあり、一度壊れたら再生は容易でありません。そして今私達がとる判断と行動は、私達の後を歩いてくる子供達や孫達の生活に繋がっていきます。今が便利か?楽か?快適か?効率がいいか?儲かるか?そういうことでは決められないことが沢山あります。神奈川県の農業衰退に歯止めをかけるには、私達、神奈川県民が積極的に神奈川県産農産物を買い求めることが必要だと思います。同時にそれは私達と私達の子孫の居住環境を守ることでもあります。どんな神奈川県をつくるかは県政云々の前に、まず神奈川県の主役である私達県民一人一人の考えと消費行動が大切です。消費が変われば社会が変わります。

執筆者プロフィール

吉田雅信さんの写真

吉田 雅信(ヨシダ マサノブ)

吉田てづくり農園 農園主。

横浜市泉区中田の畑で、有機農法にこだわり年間約60種の野菜を栽培。飲食店、老人ホーム、小売店への卸販売のほか、配達地域を畑近隣町内に限定した完全会員制の生産・販売に取り組む。

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