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地産地消のススメ

かなさんの仲間通信~地産地消の輪

第9回 (有)城島園芸 吉川 貴博さん

温故知新~平塚キュウリ産地について~

私は神奈川県平塚市のキュウリ農家に生まれ育ち、2011年に就農した新米農家です。父からの指導のもと、キュウリの温室栽培の技術習得に努める日々を過ごしていますが、キュウリは成長も衰弱も早く、栽培には日々の観察力と判断力が大切だと実感しています。技術を養うことも実践することも畑にいる時間が大切だと考え、多分今日も畑にいるかと思います。


半分色が白いことからその名がついた
「相模半白節成」

神奈川のキュウリ栽培は明治30年代に平塚から始まり、明治末期の篤農家・木島才次郎はキュウリの生産組合「朝陽社(明治41年)」を、続いて、近隣地域を含めた「中郡青物連合組合(大正2年)」を設立し、この組合は青森の林檎組合・静岡の梨組合と共に日本三大組合の一つに数えられました。その功績を讃える碑が平塚市高根に建立されています。その後、昭和4年に神奈川県で育成された品種『相模半白節成(さがみはんじろふしなり)(※)』は昭和30年代後半まで関東各地で栽培され、平塚は産地として全国に名を馳せました。
そして現在、キュウリは消費量が多く重要な野菜として野菜生産出荷安定法で定められた「指定野菜」に含まれます。そして指定野菜を安定的に供給できるよう、一定規模の面積を有し、計画的出荷が可能な産地を国が「野菜指定産地」として認めており、平塚キュウリ産地はこれに含まれ、収穫量が県内最大を誇ります。
(※)相模半白節成とは、現在ではほとんど栽培されなくなった半白キュウリの代表種。その名のとおり下半分の色が白いキュウリで、ずんぐりした形で黒イボがある。肉質が締まり皮まで噛み応えがあるため、以前は漬物用として多く生産されていたが、キュウリがサラダ用食材として使用されるようになってからは、病気に弱く収量も少ないこともあり急速に廃れてしまった。
しかし、吉川さんが農業アカデミー研修中に相模半白節成の研究を重ね、ハウス栽培することで病害虫から守り、食味や食感の改善と長期収穫の実現を目指し、現在復興に努めている。


出荷される平塚のキュウリ

平塚のキュウリ栽培は、主にJA湘南ハウスキュウリ出荷組合で、2~6月に収穫する‘半促成栽培’(露地栽培より時期を少し早めて作る)と9~12 月に収穫する‘抑制栽培’(露地栽培より時期を遅らせて作る)が行われています。共販体制により【かながわブランド】のキュウリとして、ほぼ全てが県内市場を通して県内で消費されており、地産地消が成立しています。
ブランドを維持する取り組みとして、JAが農家ごとに土壌診断結果に基づく施肥設計を立てて適正施肥の指導をしており、化学合成農薬や化学肥料の使用量を少なくした栽培方法を実践しています。‘環境にやさしい農業を進める宣言’を行い知事と協定を結び、環境保全型農業推進運動協定締結団体(愛!農かながわ生産団)として、環境にやさしい農業の拡大を図るとともに、農業技術センター・種苗会社の巡回による栽培指導を受け、全組合員が生産履歴の記帳・提出を徹底しています。さらに出荷前には規格の統一を行い、毎月抜き打ち検査を実施することで、信頼確保に努めています。また、消費者との交流として、収穫体験や地域の直売所・お祭りでの宣伝・即売会も行われています。


吉川さんのキュウリハウス

私は就農する前は地産地消という言葉に対して、現在増加傾向にある直売所(生産者が自ら販売・営業する店舗)のイメージが強かったのですが、就農して、大消費地である神奈川はその限りでなく、市場に出荷する流通経路でも地産地消が成り立つことが分かりました。また、狎(な)れあうことなく消費者の信頼確保に努める産地の取り組みの重要性も分かりました。一方で、市場流通の課題の一つとして、生産と消費の場が離れやすい現状がありますので、一農家としても地域農業に関心の高い方や平塚キュウリを利用される方への情報発信や交流に努めたいと思います。

(平塚キュウリ産地を知って欲しい。)その思いから、温故知新をテーマに、現在は実用栽培されず‘幻のキュウリ’とも呼ばれる『相模半白節成』の栽培と歴史の勉強に就農研修時から取り組み、古今のキュウリの特徴や栽培の歴史・現状の情報を発信することを目指しています。取り組みの一つとして、平塚商工会議所でプロジェクトを組み、たくさんのご協力を頂きながら、七夕祭りでは相模半白節成の一本漬けのPR販売を行いました。多くの方々と交流でき、平塚キュウリに関心を寄せて頂きました。
伝統野菜や在来野菜のブームもありますが、ブームで終わらせず地産地消の産地発展につなげられるよう、このような取り組みを継続していきたいと思います。

執筆者プロフィール

吉川貴博さんの写真

吉川 貴博(ヨシカワ タカヒロ)

有限会社城島園芸 温室キュウリ専作1800坪 手習い。

1984年生まれ。東京農業大学農学部卒。

(株)サカタのタネ勤務、かながわ農業アカデミー新規就農者育成研修を経て、2011年就農。おこしびと(県央アグリフレッシュプロジェクト 食農アシスタント養成研修)参加。農業アカデミーにて新米農家・就農希望者の勉強・交流会を主催。

◆有限会社城島園芸ホームページ:
http://nouka.tv/kijima_engei/(外部サイト)

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